
トットリボーン!タイムズ 2050年わたしたちがつくるゼロカーボンのまち(1)快適に賢く脱炭素へ
2023年01月27日(金) 日本海新聞 本紙
地球温暖化による気候変動や異常気象、生態系の変化への危機意識が、世界中で共有されている。鳥取県は環境と健康を守りながら、快適に賢く住まうライフスタイルへの転換を基本的な考えとした「とっとりエコライフ構想」を提唱。再生可能エネルギーの地産地消と新技術開発による地域経済の活性化も併せて行い、環境と経済の好循環による2050年脱炭素社会の実現に向けて取り組んでいる。
この構想は従来の我慢を強いる省エネではなく、生活の質を高めるライフスタイルの転換を図ることで、二酸化炭素(CO2)排出量実質ゼロを目指すのが特徴。環境と健康にやさしく暮らしはたらく▽再生可能エネルギーを地産地消▽スマートムーブで暮らす(自動車の電動化など)▽森林整備や森林資源の活用-を4本柱としている。
県のCO2排出量は13年が469万6千トン、18年が413万8千トン。30年には対13年比60%減の187万トンとし、50年に実質ゼロを目指す。県は目標達成に向けて、独自の高断熱・高気密を満たした「とっとり健康省エネ住宅(NE-ST)」や初期投資不要の鳥取スタイルによる太陽光発電の普及、電動車の導入促進や充電環境の整備などに注力。構想をより多くの県民に知ってもらうため、構想の愛称を「トットリボーン!」と命名、CO2の文字をリボンで表現したロゴマークも制作した。
鳥取県生活環境部の中村吉孝参事監は「企業や県民の皆さんの個々の取り組みをリボンのようにつなげ、全県を盛り上げていきたい」と話している。
2050年の脱炭素社会の実現を目指し、とっとりエコライフ構想に基づき行われている県内の取り組みを、9回連載で紹介する。
【写真説明】とっとりエコライフ構想の概要を説明する中村参事監

トットリボーン!タイムズ 2050年わたしたちがつくるゼロカーボンのまち(2)再造林で木の若返り推進
2023年01月29日(日) 日本海新聞 本紙
森林と木材資源の活用は、二酸化炭素(CO2)の吸収・固定につながる取り組みとして注目される。鳥取県内ではスギなどの人工林の半数以上が主伐期を迎えており、このまま木の少子高齢化が進めばCO2の吸収量が減り、地球温暖化を防止する森林の機能が十分発揮されない。
県は皆伐再造林による若返りを推進しており、補助制度の充実により、2030年度には年間320ヘクタールの若返りを見据える。木の若返りを進める中でネックなのが、長期間にわたる維持管理や経費負担。そこで成長が早い「エリートツリー」を育成し、再造林に使うスギ、ヒノキの苗木の生産体制を強化している。昨年、日本製紙(東京都)が倉吉市に採種園を整備した。採種園の管理や苗木生産は県山林樹苗協同組合が行うこととしており、地元組合との協業は全国初で、県内外の需要を見極めながら、将来的には年間100万本の苗木供給を目指している。
環境経営に力を入れる企業も増えている。県は「J-クレジット」の販売が好調で、全国でもトップクラスの実績を誇る。また、「とっとりカーボンストレージ認証制度」では、県産材を使用したオフィスや店舗などの「非住宅建築」の建築主に対して、CO2固定量を評価し、認証書を交付。昨年1月以降、福祉施設や医療機関など11団体が認証されており、建築物の木造化が進んでいる。今後は里山の整備、子どもを対象にした出前授業や植樹体験、木育などを通して、森の恵みを次世代につないでいく。
【写真説明】エリートツリーの採種園とCO2固定量を見える化した認証書(コラージュ)

トットリボーン!タイムズ 2050年わたしたちがつくるゼロカーボンのまち(3)子どもの関心高める事業
2023年02月07日(火) 日本海新聞 本紙
鳥取県地球温暖化防止活動推進センターと鳥取県気候変動適応センターの機能を併せ持つ「ゼロカーボンとっとり」は本年度、新体制でスタートした。NPOエコパートナーとっとりを母体として、地域に根差して地球温暖化を食い止める対策を推進している。
脱炭素社会の実現に向けて、気候変動の「緩和」と「適応」を両輪にした普及啓発活動に力を入れている。県内の環境問題に関する情報発信や啓発、とっとりエコサポーターズ養成、気候変動の情報収集や調査研究など多角的に取り組んでいる。
二酸化炭素排出実質ゼロの目標に設定した2050年は、現在の子どもたちの世代が主役になる。今からゼロカーボンに関心を持って実践してもらうよう、新事務局でもさまざまな事業を展開した。
まず、県内のすべての小学生に「こどもゼロカーボンチャレンジ」をPRする情報紙を配布した。夏休み期間を利用して、家庭でできるゼロカーボンチャレンジのチェックシート、将来のゼロカーボンのアイデアを考えるイラストなどを募集。また、家庭の脱炭素を推進するとっとりエコライフキャンペーンを行ったり、太陽光発電で走行するソーラーカー模型の工作教室も実施した。このほか育児世代に向けても、子育て情報紙を通じて、県独自の健康省エネ住宅性能基準「NE―ST(ネスト)」や、住宅用太陽光発電システムの特集をしている。
ゼロカーボンとっとりの大野木昭夫センター長は「2050年までに温室効果ガスを実質ゼロにするため、暮らしを見直し、限りある資源を大切にしたサステナブルな社会をつくる。そのために地域とともに活動し、将来ある子どもたちの関心を高めていきたい」と意気込んでいる。
【写真説明】ゼロカーボンのアイデアで入賞した児童と大野木センター長

トットリボーン!タイムズ 2050年わたしたちがつくるゼロカーボンのまち(4)EVで〝エコ移動〟促進
2023年02月16日(木) 日本海新聞 本紙
マイカー中心の移動を見直すだけで、ガソリン使用量と二酸化炭素(CO2)排出が抑えられ、地球に優しい暮らしができる。マイカーを所有せず徒歩や公共交通を利用したり、車を共同利用するカーシェアは“エコ移動”を促す手法の一つ。そこに電気自動車(EV)を導入すれば、CO2削減効果はさらに高まる。
カーシェアを始めて10年になる「智頭石油」(智頭町)。現在、鳥取市内8カ所に無人ステーションを設け、ウェブ予約した会員が24時間利用できるようにしている。導入車両10台の半数以上がEVなどの電動車。脱炭素に有効なEVを多くの人に体感してもらおうと、車種・グレードに関係なく料金を一律設定し「近場の移動はカーシェアで」と呼びかける。
ライフスタイルの変化や経済的メリットを勘案し、週末しか使わない車を手放してカーシェアを選ぶ人が増えているという。週末なら買い物やドライブなどに3~6時間の一般利用、平日なら企業の利用も多い。同社新事業推進室の谷口俊介室長(38)は「目的に合わせて車に乗るカーシェアの普及は、無駄なマイカー利用が減るなど脱炭素に貢献できる」として、新車種の導入やステーションの増設でさらなる需要の掘り起こしを図る。
また、近未来の地域交通を充実するモビリティーの選択肢としても注目。谷口室長は、公共交通機関が手薄な高齢化が進む集落などに自動運転が可能なEVなどを1台配置することで「生活交通を確保するカーシェアの新しいスタイルも提案できる」と考えている。
【写真説明】定期的な洗車、メンテナンスで車の利用に備える智頭石油のスタッフ

トットリボーン!タイムズ 2050年わたしたちがつくるゼロカーボンのまち(5)再エネ活用しサバ養殖
2023年02月23日(木) 日本海新聞 本紙
海水温上昇など漁業環境の変化に伴い近年、注目される陸上養殖。岩美町網代港にある施設では、井戸工事などを手がける「タシマボーリング」(鳥取市)が再生可能エネルギー(再エネ)を活用したサバ養殖に挑んでいる。
同施設ではJR西日本が「お嬢サバ」と名付けサバを養殖していた。この施設のボーリング調査や地下海水をくみ上げる管理を担っていたタシマボーリングが、2021年4月に事業を引き継いだ。
敷地内に掘られた100メートルの深井戸で、飼育に重要な水温維持を目的とした地中熱利用システムを設置し、自社技術を生かした養殖方法の取り組みを試験的に行っている。飼育に使用する海水は地下10メートルからくみ上げた地下海水。赤潮などの影響を受けにくく、アニサキスなどの寄生虫のリスクが少ない利点がある。
鳥取県がアンバサダーを務め、中小企業などが全使用電力の再エネ転換を目指す「再エネ100宣言RE Action」に参加している同社。国や県の補助金を活用し、昨年6月に太陽光パネルを水槽屋根に設置。海水をくみ上げるポンプなどで日中に使用する電力の約50%を自給している。
環境に負荷をかけない持続可能な養殖を目指す同社は「お嬢サバ」と並ぶ新たなブランド「さばみちゃん」の飼育にも知見を蓄えているさなか。田島大介社長(53)は「再エネでの完全生育が目標。こだわりのサバを育て、地域の活性化にもつなげていきたい」と今後を見据える。
【写真説明】再エネを活用したサバ養殖に挑むタシマボーリング(コラージュ)

トットリボーン!タイムズ 2050年わたしたちがつくるゼロカーボンのまち(6)森林保全やJクレに注力
2023年02月28日(火) 日本海新聞 本紙
鳥取県の「とっとりエコライフパートナー」第1号企業として、脱炭素社会の実現を目指して活動する山陰合同銀行(松江市)。森林保全活動では、山陰両県の豊かな地域資源である森林を次世代につなげるべく、2006年から行職員が自ら植栽などを行う。
また、自治体や森林組合、企業などが森林の整備などで生じたCO2の吸収量をクレジットとして国が認可し取引する「J-クレジット」活用支援の取り組みでは、地域に根差す同行のネットワークを活用して、クレジットを利用したい企業との仲介に尽力する。
クレジットの販売を原資としてさらに森林の整備を進めたい販売者側と、SDGsや脱炭素化の取り組みに悩む企業との橋渡しで、各営業拠点の行員が解決策の一つとして提案している。11年度に6件(360トン)で始まった活動は年々実績を重ね、18年度以降はSDGsの周知が進んだこともあり急増、21年度には90件(2504トン)に。23年1月末時点で累計も254件(8772トン)と広がりを見せる。
地域の脱炭素化を進める新しい取り組みとして昨年7月、同行100%出資子会社「ごうぎんエナジー」を設立した。企業を中心に脱炭素・カーボンニュートラルに向けた対応が広く求められており、再生可能エネルギーの需要が高まる中、同社が太陽光発電施設をPPA(電力購入契約方式)で設置することで、再エネの地産地消を狙う。現在、山陰両県内で100件を超える相談を受けており、23年度中の第1号運転開始を目指している。田村剛・地域振興グループ長(45)は「ごうぎんグループとして脱炭素・カーボンニュートラルの実現に注力し、地域の方々と共に、山陰を再エネ先進地域にまで引き上げたい」と話している。
【写真説明】脱炭素社会の実現を目指して活動を展開(コラージュ)

トットリボーン!タイムズ 2050年わたしたちがつくるゼロカーボンのまち(7) 光熱費抑え快適住まい
2023年03月03日(金) 日本海新聞 本紙
地球に優しく、健康的な家づくりの普及を進める鳥取県は、欧米並みの省エネ住宅基準を設け、「NE-ST(ネスト)な家」づくりを県内の工務店などと連携して進めている。家の性能を高めることで光熱費やCO2の排出を抑えることができ、先進事例として全国からも注目されている。
ネストでは断熱・気密性能を3段階のグレードで基準を設けて住宅を認定。県が推奨する「T-G2」の住宅は、国の省エネ基準で建てた場合と比べて工事費が120万円程度かさむが、全館空調により、冷暖房費は年間5割の節減が見込まれ、15年で増額分の工事費が回収できると試算する。さらに室温が一定に保たれることで、快適に暮らせるほか、肥満やヒートショックの予防につながるなど健康にも効果があるという。
福山建築(倉吉市)はこれまで44棟を手がけ、その8割がT-G2の住宅。同社ではネスト住宅の認定制度がない約8年前からT-G2と同様の性能を持つ家づくりを推奨してきた。現在、ネストには設計・施工合わせて計300社を超える業者が登録。松本晃一代表(51)も「県の基準が明確になったことで、よりお客さまに提案しやすくなった。関心は年々高まっている」と喜ぶ。
脱炭素社会の推進や電気代高騰により、今後ネスト住宅の需要はさらに高まることが予想される。松本代表は「お客さまが後悔しない家づくりが大切で、今後も何が一番良いのか考えて提案していきたい」と力を込める。
【写真説明】福山建築が手がけたT―G3(最高グレード)の住宅で実施した建築関係者などによる完成見学会(北栄町内)

トットリボーン!タイムズ 2050年わたしたちがつくるゼロカーボンのまち(8)地域根差した創エネ省エネ
2023年03月07日(火) 日本海新聞 本紙
脱炭素社会の実現に向け、再生可能エネルギーや省エネルギーの取り組みを積極的に展開するエナテクス(倉吉市)。県が進める「とっとりエコライフプラチナパートナー」登録企業でもあり、太陽光発電の普及や省エネ化サポートなど地域に根差した取り組みを多角的に推進する。
県内でいち早く手がけた太陽光発電と農産物栽培を同時に行うソーラーシェアリングは、常緑キリンソウの委託栽培から始めた。現在、シイタケの原木約7200本を栽培し、「サンシェードプリンス」と名付けて商品化。雇用創出にもつながっている。昨年からはドクダミ栽培を始め、拡大も計画する。
自社の再エネ導入にも積極的だ。北栄オフィスの電力を太陽光発電で賄い、蓄電池も設置。社屋を高断熱仕様にし、LED照明や高効率空調などの省エネ設備を整え、創エネと省エネで消費エネルギーを正味ゼロとする「ZEB(ゼブ)」を実現。エネルギー消費を「見える化」したシステムを自社開発し、社員もエネルギー収支が把握できる環境を整える。
また、地域の脱炭素化も目指し、企業向けの無料省エネ診断にも取り組む。エネルギー削減につながるアドバイスや省エネ提案を行うことで、実践できる具体的な省エネ項目の把握に役立ててもらっている。
同社は地域への再エネ供給を目指す新電力会社「鳥取みらい電力」にも参加。4月から北栄町、5月から琴浦町の公共施設に電力小売りを行い、一般家庭への販売も視野に入れている。牧野健治専務(59)は「経済的で地球環境に優しい取り組みを進めている。創エネと省エネの双方でゼロカーボンにつなげたい」と話す。
【写真説明】自社開発のエネルギーの見える化システムを紹介する担当の高橋泰郎部長

トットリボーン!タイムズ 2050年わたしたちがつくるゼロカーボンのまち(9)エネルギーの地産地消へ
2023年03月23日(木) 日本海新聞 本紙
再生可能エネルギーの利活用は、脱炭素社会実現に向けた重要な課題だ。再エネの固定価格買い取り制度(FIT)の価格低下などで導入意欲が低迷する中、鳥取県は県内の企業と協力して「鳥取スタイルPPA」を推進する。太陽光発電導入の新たな選択肢であり、エネルギーと経済の地域内循環を目指す試みでもある。
PPA(電力販売契約)は、個人や企業が自宅やビルの屋根などを貸し出し、発電事業者が無料で太陽光発電設備を設置する手法。個人や企業は、使った電気代のみを支払うという仕組みで「屋根貸し」とも呼ばれる。
「鳥取スタイルPPA」は、PPAの体制を県内の事業者のみで構築する取り組みだ。その先駆けとして、電力小売りサービス「Chukai電力」を展開する中海テレビ放送(米子市河崎)は、太陽光発電に蓄電池を組み合わせた「つくってためるトライアルプラン」を戸数限定で試験的にスタート。太陽光で発電した電力には燃料費調整額、再エネ賦課金が発生しないため、利用者は電気代を抑えられるほか、蓄電池が備わることで昼間にためた電気を夜間に使うことができ、災害時の安心にもつながる。契約期間は15年で、期間満了後は契約期間延長か設備の譲渡を選択できる。
同社営業部の佐古肇課長補佐(37)と伝送技術部の稲倉弦主任(45)は「エネルギーの地産地消を進めることで、鳥取県がより豊かになる仕組みづくりを目指したい」と未来を描く。
【写真説明】トライアルプランについて説明する佐古さん(左)と稲倉さん

トットリボーン!タイムズ 2050年わたしたちがつくるゼロカーボンのまち(10)脱炭素社会の実現を目指す
2023年11月20日(月) 日本海新聞 本紙
地球温暖化による異常気象が、日本はもとより世界を一変させていることの危機感を共有するため、鳥取県は2022年1月に「気候非常事態」を宣言した。県は再生可能エネルギーの活用や環境と健康を守るライフスタイルを推進し、2050年の脱炭素社会の実現に向けて県民、事業者、行政が総力を挙げて取り組み、地球と人間が共存する持続可能な未来を選択する決意を明らかにした。
宣言を受け、脱炭素社会の実現のために県が推進している「とっとりエコライフ構想」は、従来の我慢を強いる省エネではなく、生活の質を高めるライフスタイルへの転換を図ることで、二酸化炭素(CO2)排出量の実質ゼロを目指す。再生可能エネルギーの地産地消と新技術開発による地域経済の活性化も行い、環境と経済の好循環を目標としていることも構想の大きな特徴だ。この構想を多くの県民に知ってもらうため、22年6月に構想の愛称「トットリボーン!」と命名、ロゴマークを制作して全県に取り組みを広げることを図っている。
こうした状況の中、世界では気候変動対策は若者の声や活動を巻き込み、社会への反響を呼び起こすものが潮流となっている。県は県内の学生から選抜した3人を今年12月に「国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)」に派遣し、脱炭素社会の実現に向けた各国の取り組みを学ぶとともに、若者の立場から提言を行う。
県生活環境部の長岡孝参事監は「脱炭素社会の実現のためには現役世代の努力が大切なのはもちろん、これから気候変動の影響を大きく受ける若者世代の関心を高め、若きリーダーの育成が必要」と話している。
2050年の脱炭素社会の実現を目指して活動に励む若者の姿を紹介する。
【写真説明】「若者世代が脱炭素社会実現の鍵」と語る長岡参事監

トットリボーン!タイムズ 2050年わたしたちがつくるゼロカーボンのまち(11)COP28(ドバイ)への県内学生派遣① 支援団体からのエール
2023年11月29日(水) 日本海新聞 本紙
鳥取環境大と米子高専で学ぶ学生3人が29日、鳥取県使節団の一員として、ドバイ(UAE)に向け出発する。世界中の人たちが集まり気候変動対策を話し合う国連気候変動枠組条約第28回締約国会議「COP28」(11月30日~12月12日)に参加するためだ。
県の使節団派遣の狙いは、環境問題について世界的視野を持って考え、行動できる次世代リーダーの育成にある。国内の自治体が若者をCOPに送り出すのは異例で、脱炭素社会の実現を目指す自治体として、現地での意見交換や交流を通じ世界から学んだ知見の県内波及をイメージしている。
昨年のCOP27(エジプト)に参加した「全国地球温暖化防止活動推進センター」の平田裕之事務局長(50)は、気候変動に対する世界と日本の若者の熱量の差を実感し、鳥取県に若者派遣を提案した一人だ。「COPには若者の意見を取り入れようという雰囲気があった。現地で直接世界の動きを見ることで、課題と対策がよりリアルに見えてくる。自分の中の“地図”が変わると思う」と参加者の成長に期待を込めた。
環境問題の解決を目標に自治体の挑戦を支える「イクレイ日本」の内田東吾事務局長(43)は、3人が脱炭素に向けた強いメッセージを発信できるよう、事前研修にも携わってきた。「得た経験をどう生かしていくか議論に発展させ、発信していかなければならない」とした上で「自分たちだけ、県内だけで成し遂げようとせず、世界の仲間と一緒に実践してほしい。イクレイのネットワークを活用しながらサポートしていきたい」と約束した。
【写真説明】使節団メンバーの事前研修(9月、鳥取市内)

トットリボーン!タイムズ 2050年わたしたちがつくるゼロカーボンのまち(12)キャンドルナイトで脱炭素を啓発
2023年12月10日(日) 日本海新聞 本紙
鳥取市の湖山池を望む芝生広場「グリーンフィールド」が9月23日夜、幻想的な6千個のキャンドルのあかりで包まれた。同広場に隣接するクラーク記念国際高校鳥取キャンパス(鳥取市湖山町西2丁目)の生徒らが、企画から運営まで一貫して行う「キャンドルナイト」。4年目を迎えたイベントは今年、脱炭素社会の実現を目指した取り組みが新たに加わった。
イベントは実社会に近い職業体験をすることで、専修学校ならではの学びの機会とすることを目的に2020年に始まった。生徒らがキッチンカーなどの出店依頼、イベントの集客を図る広報、模擬店での金銭授受などさまざまな業務を主体的に取り組む。
脱炭素に向けては「電力を使わないキャンドルと脱炭素は親和性がある」と、同校が鳥取県脱炭素社会推進課に連携を提案したことがきっかけ。生徒らは同課の山本尚生係長から県のゼロカーボン対策などをイベント前に受講。その知識を生かし、二酸化炭素を減らして地球温暖化を防ぐための行動をまとめたチラシを作り、イベントで来場者に配布した。
イベントの実行委員長を務めた2年生の和口芽生さんは「脱炭素の啓発は来年も継続していきたい。来場者に家庭でできる取り組みのチェックリストを配り、主体的な行動を促す仕掛けも企画したい」と展望を語った。
【写真説明】キャンドルのあかりに包まれたグリーンフィールド

トットリボーン!タイムズ 2050年わたしたちがつくるゼロカーボンのまち(13)温暖化防止に向けてゼロカーボンとっとり 小学生へ環境学習に尽力
2023年12月20日(水) 日本海新聞 本紙
気候変動対策において、2030年までは「決定的な10年」と言われ、世界の気温上昇を1・5度に抑えるために現役世代の努力が重要だ。そして、2050年までの脱炭素社会実現に向けては、将来の主役となる子どもたちの協力が大切である。
県地球温暖化防止活動推進センターと県気候変動適用センター事務局のゼロカーボンとっとり(大野木昭夫センター長)は、小学生をターゲットとした啓発活動を展開している。本年度は「こどもゼロカーボンチャレンジ」の一環で、将来の脱炭素社会を描いたイラスト募集や環境すごろくの配布などに取り組んだ。
さらに環境学習の充実に力を入れている。とっとり自然環境館を拠点に「こどもエコツアー」を企画し、再生可能エネルギーに関わる「とっとり次世代エネルギーパーク」の施設見学を実施した。
子どもたちは太陽光発電や風力発電などの現場を訪れ、発電や給電の仕組みを学び、脱炭素に直結する再生可能エネルギーの重要性について理解を深めた。また、江府町に今春開校した奥大山自然塾と連携したツアーも組んでいる。奥大山の恵まれた自然の中で、森林の役割や地球環境の変動を“五感”で感じ、自分たちにできる環境保全活動を考え合った。
大野木センター長は「子どもたちが地球温暖化防止に対して関心を持つことは、ますます重要度を増している。エコツアーを通じた環境学習では、地球環境に対する興味を引き出しながら意識を高めることができた。今後は学校と連携した学習機会を設けていきたい」と意気込む。
【写真説明】2050年の脱炭素社会を描いたアイデア作品で最優秀賞の河野あかりさん(中央)と大野木センター長(左)