
トットリボーン!タイムズ 2050年わたしたちがつくるゼロカーボンのまち (14)COP28(ドバイ)への県内学生派遣② 世界へ発信、積極交流
2024年01月11日(木) 日本海新聞 本紙 【生活】 16頁 |写有 |640字
鳥取大、鳥大振興協力会、ゼロカーボンとっとりの三者は、大学生が脱炭素社会やカーボンニュートラルの実現に向けて考える「学生ゼロカーボンプロジェクト」を立ち上げた。地域の将来を担う学生たちが、環境保全につながる企業の取り組みなどを取材。自分たちに何ができるのか解決策を探っていく。
SDGsの達成やカーボンニュートラル実現を目指す人材育成を狙いとし、初年度は環境問題に関心を持つ鳥取大と鳥取環境大の学生20人が参加。事前に地球温暖化がもたらす世界の現状を学んだメンバーらは県内の事業所を訪ね、温室効果ガス削減の取り組みや課題などに耳を傾けた。
北栄町田井のエナテクス(福井利明社長)では再生可能エネルギーの技術研究や、農業と発電事業を組み合わせたソーラーシェアリングなどについて質問。地域と連携した事業展開に興味深く聞き入った。
メンバーの一人、環境大3年の藤原洋希さん(21)は「顧客への脱炭素化支援や自社のゼロエネルギー化など、率先した取り組みを学べた。今後さらに環境や社会問題への知識を深め、さまざまな人々と協働しながら課題解決に貢献したい」と意欲を見せた。
年度末には活動報告や提案発表の場を設ける予定で、プロジェクトを推進する鳥取大地域価値創造研究教育機構地域連携推進室の森田将悟係長は「プロジェクトには将来を担う大学生たちの新しい発想と挑戦が求められる。短期的ではなく、持続可能な社会の実現に向けて学生たちの取り組みが大きな一歩となれば」と期待を込める。
【写真説明】ナイジェリアの大学生(右から2人目)と意見を交わす鳥取県の派遣学生

トットリボーン!タイムズ 2050年わたしたちがつくるゼロカーボンのまち(15)「学生ゼロカーボンプロジェクト」立ち上げ
2024年01月21日(日) 日本海新聞 本紙
「脱炭素社会実現に向け、ともに協力し高め合える仲間を集めに来た」-。国連気候変動枠組条約第28回締約国会議「COP28」の会場で12月1日、ジャパンパビリオンのサイドイベントに登壇した鳥取県の派遣学生3人はこう切り出し、ドバイ(UAE)の地から世界に、ユース世代の力の結集を呼びかけた。
登壇した3人は「言葉より、行動する仲間へ」をテーマに約10分間のプレゼンテーションを展開。「『期待している』『頑張って』、そんな言葉はもう要らない。私たちが欲しいのは『一緒に頑張ろう』『協力しよう』とともに行動してくれる仲間だ」と訴え、日本の人口最少県から来た自分たちがネットワーク構築に先陣を切っていくことを表明した。
同3日まで滞在した3人は、会場内でさまざまな国の政府関係者や学生らと積極的に意見交換し、自らの視野を広めた。
その中で、ナイジェリアの大学生からは気候変動による洪水、干ばつで多くの国民が従事する農業が危機的状況に陥り、飢餓や争いが発生している現状を聞いた。これに対し、派遣学生の一人は「知識を蓄えるだけでなく行動を起こし、政治を動かすこと、植樹などの活動で多くの人を巻き込むことが重要だと助言を受けた。脆弱(ぜいじゃく)な環境の中で未来を変えていくという若者の強い意思を感じ、圧倒された」と振り返った。
派遣学生にとってドバイ滞在の3日間は、自分たちが地球環境の未来を担う自覚が強まるきっかけとなったほか、鳥取に帰って行動に移すべき気候変動対策のヒントを得る貴重な経験となった。
【写真説明】エナテクスで脱炭素の取り組みを取材する学生たち

トットリボーン!タイムズ 2050年わたしたちがつくるゼロカーボンのまち(16)健康住宅で「豊かな未来」へ
2024年02月21日(水) 日本海新聞 本紙
住宅メーカーの「ホームズ」(倉吉市八屋)が手がける住まいは家族と環境に配慮した「健康住宅」がコンセプト。牧井健一社長(50)は「省エネ生活もストレスなく快適に暮らせることが大切。家族の健康を守る家づくりが、地球環境の豊かな未来へつながる」と力を込める。
同社が提案する住宅は高気密・高断熱に優れ、冷暖房などの省エネにも効果が大きい。また、室内の温度差が小さいため、体への影響が少なく健康的で、再生可能エネルギーの活用などにより、災害時も安心で安全な居住空間となる。鳥取県が推奨する健康省エネ基準「NE-ST(ネスト)」にも対応し、時代に合わせカスタマイズを続ける。
中小企業などが全使用電力の再生可能エネルギー転換を目指す「再エネ100宣言RE Action」にも参加。自社電力をまかなうため、同社敷地内に設置する太陽光発電パネルやソーラーカーポートは販売も展開し、電力の自給自足の普及にも取り組む。
自宅の駐車場にソーラーカーポートを設置した倉吉市の男性(38)は、住居も同社で新築。エアコン1台で夏も冬も快適に過ごせ、新設したカーポートによって電気代が抑えられたという。
また、日々の電気使用量などは「HEMS(ヘムス)」という機械で確認でき、「発電するとランプが付くので意識するようになった」と施主の男性。太陽光発電パネルは設置費用こそかかるが「長い目で見ると家計にも優しい。カーポートの選択肢も実用的だと思う」と話す。
牧井社長は「エネルギーを『見える化』することで、住まいが脱炭素や環境問題を“自分のこと”として取り組める身近な場所になる」と強調。脱炭素に向けて再エネの地産地消を促し、環境に優しく快適で健康につながる未来のエコロジーを創造する。
【写真説明】自宅の駐車場に設置したソーラーカーポート

トットリボーン!タイムズ 2050年わたしたちがつくるゼロカーボンのまち(17)COP28(ドバイ)への県内学生派遣③ 環境先進県へ若者リード
2024年03月06日(水) 日本海新聞 本紙
重要なのは行動で示せる仲間づくり。世の中を大きく動かしていけるようなワクワク感あるアイデアを持って気候変動など地球規模の環境課題と対峙(たいじ)し、持続可能な地域づくりにつながる脱炭素に向けて「人口最少県からうねりを上げていこう」という若者たちの訴えに、会場の気概が高まった。
2月16日に鳥取市内で開かれた鳥取県の「COP28UAE学生派遣事業」報告会。昨年12月、国連気候変動枠組条約第28回締約国会議「COP28」に参加した鳥取環境大4年の横山椋大さん(23)、同3年の三谷菜摘さん(21)、米子高専専攻科2年の小島翼さん(22)の派遣学生3人が、海外の若者との意見交換などで得た経験を基にメッセージを発信した。
高校生、大学生中心に約50人が参加した第1部では派遣学生を交え、参加者が5、6人ずつのグループに分かれて意見交換。「脱炭素社会を実現するためのワクワクするアイデア」を出し合った。中には数値目標を達成した地域、企業、家庭への特産品プレゼントなど地域活性化にひも付けた取り組みを発表したグループもあった。
若者がリードする環境先進県へのレベルアップを目指す鳥取県。来年度は新たな学生ネットワークを構築し、仲間との交流、話し合いを通じて知識を蓄え、固定概念に捉われない発想力を生かした若者による脱炭素社会実現に向けた県民のライフスタイル転換を促す企画実施も視野に入れる。
【写真説明】グループトークで盛り上がる

トットリボーン!タイムズ 2050年わたしたちがつくるゼロカーボンのまち(18)COP28(ドバイ)への県内学生派遣④ 鳥取に合う脱炭素と
2024年03月07日(木) 日本海新聞 本紙
社会人が大勢参加したCOP28UAE学生派遣事業報告会の第2部は、パネル討議が行われた。テーマは「脱炭素に向けてひとりひとりができること、みんなでできること」。地球温暖化防止全国ネットの平田裕之事務局長を進行役に派遣学生3人、同事業を支援した鳥取環境大の甲田紫乃准教授や同事業担当の県職員ら6人が意見を交わした。
COP28に参加し、海外では地球環境を最優先する若者主導の動きがあることを実感した派遣学生の一人は「若者が活躍できる場が必要」など脱炭素を支える人材育成にも話題を向けた。脱炭素を絡め、鳥取らしさを出せるまちづくりのイメージを膨らませるひと幕も。地産地消できる自立分散型エネルギーによるまちづくりを推す声があったほか、「全国で成功例が多い発電方法が、鳥取でフィットするとは限らない」などとして、鳥取の環境に合った科学技術ツールの選択を訴えた。
また、地域間交流を推進し、森林整備による二酸化炭素(CO2)削減を目指して東京都千代田区と連携協定を結んだ智頭町の取り組みが紹介されると、パネリストの一人、ゼロカーボンとっとりの大野木昭夫センター長は「CO2を減らす取り組みだけでなく吸収する森林を整備して活用することを考えるべき」と述べた。
気候変動などの環境問題に「無関心な人はいても、無関係な人はいない」。大切なのは誰もが問題を自分事として捉えていくこと。できることはたくさんあるはずだ。
【写真説明】パネル討議の様子

トットリボーン!タイムズ 2050年わたしたちがつくるゼロカーボンのまち(19) 温暖化問題への関心を高める
2024年11月02日(土) 日本海新聞 本紙
地球温暖化による異常気象が、私たちの生活に大きな影響を与えている。記録的な猛暑となった今夏、鳥取市では8月22日に観測史上最高となる39・4度を記録。猛暑だけに留まらず、日本では7月には東北地方、9月には北陸地方で記録的な大雨が降ったほか、海外ではアマゾン川流域の干ばつやサハラ砂漠の洪水発生など、温暖化が引き起こす影響は地球の至るところで見られる。
気候変動とその対策に関する科学的な知見を提供している国連の関連機関「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は2021年8月、「第6次評価報告書第1作業部会報告書」で「人間の影響が大気、海洋および陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない」と発表。「国連気候変動枠組条約締結国会議(COP)」は、50年までに温室効果ガスの排出量と吸収量が同じになるカーボンニュートラルの達成が必要だとして、温暖化の対策を強化している。
こうした状況の中、鳥取県は50年の脱炭素社会の実現に向けて県民、事業者、行政が総力を挙げて取り組む「とっとりエコライフ構想」(愛称=トットリボーン!)を提唱。再生可能エネルギーの活用や環境と健康を守るライフスタイルを推進し、持続可能な社会の実現を目指す。
県はスポーツ、音楽、防災キャンプなどと絡めた再生可能エネルギーの普及啓発イベントの開催や省エネ診断員の育成、省エネ・再エネを導入する際の補助制度の整備など、県民に温暖化の問題に関心を持ってもらおうと、さまざまなアプローチを行う。県脱炭素社会推進課の村田竜輝主事は「地球温暖化の影響は身近にも現れてきており、将来、子ども世代ではより大きな影響を受ける可能性が高い。今の現役世代はもちろん、子ども世代が安心して快適に過ごすことができるよう、一人一人が自分事として、この問題に取り組むことが大事」と話す。
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脱炭素社会の実現を目指す行政、企業、団体の取り組みを紹介する。
【写真説明】災害時を想定したキャンプで再生可能エネルギーの利活用法を体感するイベント参加者(今年10月)

トットリボーン!タイムズ 2050年わたしたちがつくるゼロカーボンのまち(20) 環境先進国へ学生派遣
2024年11月21日(木) 日本海新聞 本紙
鳥取県内の大学生が今秋、北欧フィンランドのトゥルク市を訪れ、温室効果ガス排出に大きく関わる「食の循環」をテーマに施設見学や現地の学生らとの意見交換を行った。2029年の早期カーボンニュートラルを目指す環境先進自治体で、脱炭素社会実現に向けた取り組みの一端を垣間見た。
鳥取県が鳥取環境大と連携して行う学生相互派遣事業。地球環境問題に挑む県内学生有志が今春設立した学生プラットフォーム「トットリボーン!ユース」のメンバーから派遣学生3人(鳥取環境大2、鳥取大1)を選抜した。
派遣学生の一人、下江信之介さん(鳥取環境大4年)は、トゥルク大の研究機能を備えたカフェテリアの見学が印象に残った。「どの人がどのメニューを選んだかモニタリングできるようになっていて、調理ロスが出ないよう最適化されていた。学内に社会実装の場があることが興味深かった」と振り返る。また、住民との会話が環境の話題で盛り上がり、環境に対する住民の意識の高さに衝撃を受けたという。
「環境や人は常に変化している。皆が環境に意識を向け、学び続けることが重要だと思う。そこから、つながりができていけば」と話す下江さん。環境問題に取り組む仲間づくりの必要性を痛感したようだ。
トゥルク市からの学生派遣団は12月9~11日の日程で鳥取県を訪れる。
【写真説明】トゥルク市都市環境部門の副市長(左から3人目)と派遣学生ら

トットリボーン!タイムズ 2050年わたしたちがつくるゼロカーボンのまち(21) とっとりエコサポーターズ 地球温暖化防止活動の地域リーダー
2024年12月06日(金) 日本海新聞 本紙
ゼロカーボンとっとりは、鳥取県地球温暖化防止活動推進センターと鳥取県気候変動適応センターの機能を併せ持ち、2022年に発足した。全国の自治体ネットワークがある支援機関と連携を強めながら、地球温暖化にストップをかける活動に取り組んでいる。
その中で力を注いでいるのが、とっとりエコサポーターズ(鳥取県地球温暖化防止活動推進員)の育成強化だ。地球温暖化対策をともに普及啓発する仲間づくりを行っている。
体制は▽地域活動部会▽省エネ・再エネ推進部会▽学生部会―の3部会に分かれる。このうち省エネ・再エネ推進部会は、家庭に向けた「うちエコ診断士」、企業向けの「鳥取県登録省エネ診断員」の有資格者が集まる。学校や地域へ出向き、省エネや再エネの出前授業なども行えるよう、体制づくりを進めている。
県内のエコサポーターズは現在90人が登録している。新たに登録を希望する人は、養成講座を受講し、県への申請が必要になる。本年度の養成講座は12月13日、倉吉市のエキパル倉吉で開かれ、全国地球温暖化防止活動推進センターの平田裕之事務局長らが気候変動の対処事例などを講義する。
ゼロカーボンとっとりの大野木昭夫センター長は「脱炭素社会を実現するためには、家庭でエネルギー効率の高いライフスタイルへの転換、企業の脱炭素経営の促進などが必要になる。推進員の皆さんと共に個別呼びかけが重要と考えている。地球温暖化や気候変動の問題に関心があれば、養成講座に参加してほしい」と話している。
【写真説明】脱炭素社会の地域リーダーとなるエコサポーターズ養成講座

トットリボーン!タイムズ 2050年わたしたちがつくるゼロカーボンのまち(22) 企業の省エネ県が支援 カーボンニュートラル実現へ
2024年12月16日(月) 日本海新聞 本紙
鳥取県の二酸化炭素排出量の約4割は、企業が占める。2050年カーボンニュートラルの実現を目指す県にとって、企業の省電力化、再生可能エネルギーへの転換の推進は欠かせない。
県がアンバサダーを務める「再エネ100宣言RE Action」は、中小企業などが事業に使う電気を100%再エネで賄うことを目指す取り組みで41社(全国388社)が参加。鳥取県の参加企業数は東京都に次いで全国で2番目に多く、倉繁歯科技工所(倉吉市大原)と中海テレビ放送(米子市河崎)の2社はすでに「再エネ100」を達成している。参加企業は、省エネ設備更新や自家消費用太陽光発電の導入などについて、県の支援メニューを活用できる。
今年の5月から参加した鳥取市の飲食店「鉄板焼ゆきちゃん」(鳥取市野寺)は県と鳥取市の補助金を活用し、7月に店内全てのエアコンを省エネ型に取り替え、照明をLED化するなど大胆な省エネ化を図った。
年間約15万円の電気代の削減につながり、約6年で投資回収できる見通しで、中田ゆきえ店長(68)は「電気代が削減でき、お客さんからは『照明が明るくなったね』とほめてもらえることが多くなった」と喜び、成果を実感した。
県脱炭素社会推進課の木下博登係長は「省エネ設備投資が副次的な効果も生んだ好事例であり、ロールモデルとして横展開したい」と語る。
【写真説明】省ネ型機器に取り換えた「鉄板焼ゆきちゃん」の店内